著者: 栗原 泰人
代表理事 / 金融アナリスト

なぜ多くの大企業が、十分な研究開発力と人材を持ちながらもイノベーションに失敗し、衰退していくのか。その背後には、現代の資本市場が強要する『極端な短期志向』という構造的病理が存在します。
本質的な価値というものは、数ヶ月や1年で満期を迎えることはありません。社会的インフラ、真に持続可能なサプライチェーン、次世代の若手の育成。これらはいずれも長期的な投資と忍耐(ペイシェント・キャピタル)を必要とする領域です。しかし、既存の金融理論は「割引現在価値」という名のもとに、未来への大きな価値を極端に小さな金額へと還元してしまいます。
毎四半期の利益率を1%上げるために、下請け企業に不当なコストカットを強いる。短期的な人件費を削るために、経験豊富な技術者をリストラする。これは事業成長などではなく、未来の資産を「切り売り」して今期の帳尻を合わせているにすぎません。真の経済的リーダーシップとは、この構造を自覚したうえで、自社が持つ『本源的価値(インサバイバル・バリュー)』が何であるかを明確に定義することから始まります。
RESONANCEの戦略セッションでは、近年世界的に注目を浴びているステークホルダー資本主義を、単なる倫理のスローガンから『財務的に強固な経済合理モデル』へと引き下げて再定義します。従業員やサプライヤー、顧客との関係を強化することにより、不確実性の極めて高い平時外の不況時において、サプライチェーンの維持や顧客の絶対的な定着(LTVの飛躍的向上)がどう機能するかを、数理モデルとともに解析します。
これらを実現するには、経営者自らが圧倒的な理論武装をしている必要があります。「我々はなぜこの長期投資を行うのか」を、機関投資家に対して合理的に説明しうるだけの言語能力、および対話スキル。その実践をサポートするのが、RESONANCEのエグゼクティブMBAプログラムです。理論と内省を繰り返した末に語られる言葉には、他者をねじ伏せる力ではなく、他者の信頼を勝ち取る深い知的強度が宿ります。